老人性痴呆症(アルツハイマー)を離婚原因として離婚をしようとする場合には、それが民法に定められている離婚原因の「精神病」に該当するかで決まります。

つまり、老人性痴呆症(アルツハイマー)が民法に定める「精神病」に該当すれば離婚ができるのですが、それには老人性痴呆症(アルツハイマー)が、

  • 強度の精神病
  • 回復の見込みがないとき

という要件に当てはまることが必要です。(民法770条1項4号)

裁判所の判断

平成2年に老人性痴呆症(アルツハイマー)を強度の精神病として認めるかどうかの判決がありました。その判決では「老人性痴呆症(アルツハイマー)が強度の精神病に該当するには疑問が残る」として離婚を認めませんでした。つまり、老人性痴呆症(アルツハイマー)を、強度の精神病を離婚原因として離婚をすることはできないのです。(このときは他の理由を「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとして離婚を認めています。)

結局、老人性痴呆症(アルツハイマー)では離婚できないのか?

過去判例を紹介します。老人性痴呆症(アルツハイマー)は強度の精神病に該当しないために離婚を認めていませんが、次の3点を理由として離婚を認めています。

  • 長期にわたり夫婦の協力義務が果たせずに婚姻関係が破綻していること
  • 離婚後も病人が他方配偶者によって若干の経済的援助と面会が得られること
  • 全額公費負担の老人ホームに介護が得られること

つまり、老人性痴呆症(アルツハイマー)を精神病として離婚を認めることは少なく、夫婦関係や離婚後に病人がおかれる状況などを総合的に判断して離婚が認められるといえます。